日本のアニメ映画やOVAは、今ほどアニメが市民権を得ていなかった頃から現在に渡り、様々な影響を他作品に与えてきた。
それこそ海を越え、山を越えて。
その中には数十年前の作品も多いけれど、今でも通用するものも多い。
今回は、そんな劇場アニメとOVAのおすすめ42作品をまとめて紹介する!
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機動戦士ガンダム 第08MS小隊
初代ガンダムと同じ時系列で語られるOVA作品。
本作は東南アジアの密林が舞台で、主人公たちは、グリーンベレーよろしくガンダムを駆る。
ロボットというと、空中をビュンビュン飛び回るイメージがあるかもしれないけれど、この作品に出てくるガンダムは地上を這いつくばって、泥んこになりながら戦闘を行う。
あんなに動きづらそうなところでガンダムを使うこと自体どうかしていると思うけれど、この泥だらけ、傷だらけのガンダムが不思議と格好いい。
かつて、スティーブ・ジョブズが傷だらけのiPhoneを格好いいと言ったことと同じく、この作品のガンダムは、まるで使い込んだ漆器のように味があってイイ。
泥んこロボットを格好いいと思うアナタへ
同様にミリタリー色の強いガンダムは、映像作品ではあまり見かけないけれど、小説ではこれがおすすめ。
オーダーメイドの一点ものの機体より、量産型の方が戦地で如何に戦力になるかが語られるシーンにはゾクゾクする。
ジャンル : ロボット、SF、ラブストーリー
監督 : 神田武幸、飯田馬之介
メカニカルデザイン : 大河原邦男、カトキハジメ、山根公利
頭山
「カフカ 田舎医者」 山村浩二の代表作。
日本人ではじめてアカデミー賞短編アニメーション部門にノミネートされた他、国内外数々の賞を受賞している名作。
頭山は落語の演目の一つで、桂枝雀が「さくらんぼ」の題名で演じていたことでも知られる。
頭に桜の木が生えた男に振りかかる災難をおもしろおかしく語るストーリーなのだが、ラストでの無限ループ的な落とし方はSF魂がくすぐられて見事。
浪曲師 国本武春による語りも一聴の価値ありな、「カフカ 田舎医者」と同じく長くその価値が色褪せることのない作品。
ジャンル : ドラマ、 コメディ
監督 : 山村浩二
キャスト : 国本武春
映画けいおん!
京都アニメーションは、本当に空気を掴むのがうまいよなあと、この映画を観ると嘆息してしまう。
ご存知、TVアニメ「けいおん!」のメーンキャラクター達のロンドンへの卒業旅行を描いた劇場版。
卒業間近、授業も受験もない、人生でトップクラスに自由だけれども、何か大それたことをやるわけでもないあの時間。
今までの学校生活が急にいい思い出ばかりに変わるあの時間。
そういった時間の空気を、この映画は映像化することに成功している。
その空気や雰囲気がいいだけではなく、後輩である梓へのプレゼントが、物語のちょっとした謎解きであり、鑑賞者を飽きさせない牽引役になっていてお見事。
卒業へのカウントダウンがはじまり、学校での友達との時間が貴重になるあの雰囲気は、ちょっとこのアニメ以外では観たことがない。
ジャンル : 学園、コメディ、音楽
監督 : 山田尚子
脚本 : 吉田玲子
原作 : かきふらい
キャスト : 豊崎愛生、日笠陽子、佐藤聡美、寿美菜子、竹達彩奈
制作 : 京都アニメーション
劇場版 ∀ガンダム Ⅰ 地球光 / Ⅱ 月光蝶
数あるガンダムシリーズの一番最後に位置するという壮大な作品。
しかしながら、作品の雰囲気は牧歌的で、どこか「アルプスの少女ハイジ」や「あらいぐまラスカル」を思わせる。
劇場版である本作は、TVシリーズ「∀ガンダム」をまとめた前後編映画。
50話あったものを合計4時間にまとめているから、展開が分からなくなる部分もあるけれど、そんな時はなんとなく全体を見て流すのが富野アニメを楽しむ秘訣。
黄金の秋を見よう
本作のラストシーンは、TVシリーズ最終話「黄金の秋」にあたるが、ここが特にいい。
すべての戦いが終わり、菅野よう子作曲による「月の繭」に合わせ、それぞれが違う人生を歩んでいく姿を観ると、映像と音楽がピッタリ合ったとき、奇跡のような演出効果が出るもんだと思わせられる。
実写映画だと、「リリイ・シュシュのすべて」がこの類で、映像で語られていること以上に、観ている人が音楽によって想像する余地が足される。
このシーンを観るためにだけでも∀ガンダムを観てもいい。それぐらいの名シーンに仕上がっている。
シド・ミードがガンダムをデザインした
本作のメカニックデザイナーには、リドリー・スコットの「ブレードランナー」のデザイナーを務めたシド・ミードが参加しており、∀ガンダムをはじめとして多くのモビルスーツをデザインしている。
作中でも「ヒゲ」なんて呼ばれている奇抜なデザインの∀ガンダムは、なるほどシド・ミードという異邦人の手になる仕事だからか。
機体の流線型のラインがとにかく美しいけれど、初めて見た時は、今までのガンダムデザインとの違いにギョッとしたもの。
しかし5回見ると慣れてきて、10回目にはカッコイイかも?と感じ、20回目には一番格好いいガンダムだと思うようになる。
∀ガンダムには、他にもシド・ミードがデザインしたモビルスーツが登場するため、デザイナー目線でも楽しい作品である。
福井晴敏による小説版は頂点
なお、∀ガンダムには福井晴敏による小説版も存在する。
映像版が牧歌的な雰囲気を持っていたのに対し、重々しくシリアスなストーリーテリングや、モビルスーツの動力源、Iフィールド、ニュータイプなどの設定について詳細に書いている。
ガンダムのノベライズ作品では間違いなく最高傑作。
ノベライズというか、これはもう一つのSF長編小説だと言える。
カラマーゾフの兄弟 上・中・下は何度も挫折したけれど、この三作は一気に読み通してしまった。
ジャンル : ロボット、SF
監督 : 富野由悠季
メカニックデザイン : 大河原邦男、シド・ミード、重田敦師、沙倉拓実
音楽 : 菅野よう子
公式 : ∀ガンダムWeb
エヴァンゲリオン新劇場版:破 EVANGELION:2.0 YOU CAN (NOT) ADVANCE.
TVシリーズおよび劇場版 新世紀エヴァンゲリオンを再構成し、新たなストーリーを加えて再映画化した劇場作品の二作目。
本作は、TVシリーズの第八話から拾九話にあたる部分を描く。
いい映像作品は、映像と音楽が「まじ半端ねえ」レベルでコンビネーションしているものが多いけれど、本作も例によって素晴らしいシーンを見せてくれる。
原曲 森山良子「今日の日はさようなら」をバックに、主人公 碇シンジが乗るエヴァンゲリオン初号機と、同じくパイロットの式波・アスカ・ラングレーが乗る2号機(に寄生した第9の使徒)の闘いを描くシーンは、ラーゼフォンのブルーフレンドに並ぶ切ない名シーン。
他にも、第10使徒と初号機との闘いでは「翼をください」が流れる。
誰もが音楽の授業で歌ったりして知っている曲を戦闘シーンに持ってくる演出の才能にはいい意味で開いた口が塞がらない。
元々、旧作のエヴァンゲリオンでもこの手法は使われていて、そのオリジナルはウルトラセブンの最終話であることは広く知られている。
男・碇シンジ 爆誕
旧作との大きな違いに、一度は辞めたエヴァンゲリオンパイロットに復帰する碇シンジの動機が明確になっている点がある。
その動機は、パイロットである綾波レイを助けたいという主体的なもの。
それまではどちらかと言うと受身的にパイロットをやっていた碇シンジが、主体性を見せるから、碇シンジが一皮剥けて「男」になったようで、嬉しいしアツくなる。
※関係ないけれど、瞬間メタルがオードリーのオールナイトニッポンでも披露していた「おとこぉ!」という芸を、碇シンジが父と離すシーンに挟んだら死ぬほど面白いな。
エンターテインメントとしての新劇場版:破
エヴァンゲリオンは、旧作も新劇場版も、かなり難解で複雑な設定・伏線が頻出する作品。
それにも関わらず、この新劇場版:破はエンターテインメントとして分かりやすく面白かった。
その理由は、碇シンジが男になるストーリーにフォーカスを絞り、彼の動機がわかりやすくなるような数々の仕掛けを施しているからだと考える。
先の第10の使徒戦では、まるで島本和彦「炎の転校生」のガヤよろしく、葛城ミサトがシーンの意味を説明口調にならず叫ぶ。あ、炎の転校生はワザと説明口調になるときあるか。
こういうセリフは、ともすれば説明的になって興が冷めるものだけれど、このシーンでは何の違和感もない。
TVシリーズのストーリーを再構成し、くさくならないレベルで説明を挟んだ本作は、難解な部分が分からなくとも安心して楽しめるエンターテインメント作品に仕上がっている。
ジャンル : ロボット、SF
監督 : 庵野秀明、摩砂雪、鶴巻和哉
製作 : カラー
キャスト : 緒方恵美、林原めぐみ、宮村優子、坂本真綾
音楽 : 鷺巣詩郎
主題歌 : 宇多田ヒカル 「Beautiful World -PLANiTb Acoustica Mix-」
公式 : ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破