絶対に見た方がイイ名作アニメ映画 / OVAのおすすめ42選! 第八話

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日本のアニメ映画やOVAは、今ほどアニメが市民権を得ていなかった頃から現在に渡り、様々な影響を他作品に与えてきた。

それこそ海を越え、山を越えて。

その中には数十年前の作品も多いけれど、今でも通用するものも多い。

今回は、そんな劇場アニメとOVAのおすすめ42作品をまとめて紹介する!

うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー

文化祭前夜、みんなで準備の追い込みをしているあの時間は、ともすれば当日よりも楽しい高揚感と心地良い疲労感があってたまらない。

本作は、鬼族の宇宙人ラムちゃんと諸星あたるらの登場人物による学園コメディ映画で、文化祭直前のドタバタからはじまる。

僕の最も好きなシーンは、一番最初だけれどもここ。本番までになんとか準備を終わらせようとして走り回る学生たちの姿にグイグイ心掴まれる。

会場を奔走して作業に明け暮れる生徒たち、一息ついてお茶を飲みながらダラダラする女の子たち、帰りの電車での男子生徒・メガネ(千葉繁)の疲れた様子、押井守が画として一番描きたかったシーンはここなんじゃないかというぐらい、あの独特な雰囲気があふれている。

それでいて、映画作品として中だるみしないよう、しっかりとサスペンスの緊張感も持ち合わせたバランスのいい作品でもある。

 

押井守お得意の演出が詰まっている

押井守作品に頻出する演出がこれでもかと詰め込まれているのも本作の見どころ。

本の朗読かと思うぐらい長い独白、同時代人の宮﨑駿アニメとはまた違うワイガヤな食事シーン、戦闘機……。

「超時空要塞マクロス 愛・覚えていますか」と同年の1984年に公開された本作。

両作には板野一郎が携わっており、ビューティフル・ドリーマーでは垂直離陸型戦闘機・ハリアーのシーンを担当していて、マニアックなぐらい凝ったハリアーのシーンは、なるほど、彼によるものなのかと納得した。

 

胡蝶の夢に対するアンサーアニメ

この作品は、劇中でも語られていた「胡蝶の夢」を下敷きに、「夢と現実」をテーマにしている。

クリストファー・ノーランの「インセプション」や今敏「パプリカ」、涼宮ハルヒの1エピソード「エンドレスエイト」、「劇場版 魔法少女まどか マギカ [新編] 叛逆の物語」など多くの作品の下敷きになっている荘子による説話で、概要はこういうもの。

夢の中で胡蝶(蝶のこと)としてひらひらと飛んでいた所、目が覚めたが、はたして自分は蝶になった夢をみていたのか、それとも今の自分は蝶が見ている夢なのか、という説話である。

– 出典 : 胡蝶の夢 – Wikipedia

果たして夢と現実、どっちがほんと?といった疑問がこの話から匂い立つけれど、それは問題ではない、どちらでもよいと荘子は言い切る。

その心は、「夢か現実か?に倣うような対立」は、考えかたひとつでどちらも同じことであり、その点に立ってどちらも受け入れればいいということ。

夢と現実でいうと、僕なんかは絶対現実がいいけれど、もう少し小さな、例えば日常生活や仕事上のちょっとしたことは、確かに考えひとつで正誤が入れ替わるよなあと思う。

ビューティフル・ドリーマーはといえば、人間の主体性を持ち込んで胡蝶の夢に答える。

物語終盤、諸星あたるとその悪友たちは、今自分たちのいる世界がラムによって作られた夢の世界だとわかりながら、その世界をこれでもかと楽しみ尽くす。夢だからなんやねん?とでも言うように。

ところが、諸星あたるは、ラムに対する想いから現実へ帰ることを望む。

これは、「夢でも現実でもいいけど、自分の好きな世界がいい」と、胡蝶の夢へ回答しているようだ。

エゴイスト・諸星あたるの真骨頂が発揮され、自らの願う世界を手にいれるが、果たして現実に戻れたか?というと答えはNOで、夢がループしたことが示唆されている*。

しかしそんなことはどうでもいい。夢が現実なら、現実は夢なのだから。

*エンドタイトル→2階建ての校舎 → 「ループ」のメタファーとしてのブーメランが歌詞の「愛はブーメラン」 → 冒頭の放心状態の諸星あたるが示す無限ループ。舌を巻く演出だ。冒頭、何故か全く説明のない廃墟から映画が始まるのも、ラストのエンドタイトルからが本当の始まりだと見ると納得できる。

 

ジャンル : 学園、コメディ、サスペンス

監督 : 押井守

原作 : 高橋留美子

主題歌 : 松谷祐子「愛はブーメラン」

 

サマーウォーズ

夏休みの雰囲気が充溢した、細田守による作品。

地方の田舎を舞台に、そこに住む大家族、都会から来た高校生、大家族のはみ出し者が描かれる。

個人的に、あんなに美しい場所での美しい夏休みを過ごしたことがないけれど、夏休みっぽいわ〜とすぐに共感できたから、何か日本人として刷り込まれたものがあるのかもしれない。外国の人が観てどう感じるか知りたいな。

 

未来予知アニメ サマーウォーズ

作中では、現代よりも少しだけ未来的な技術が使われており、インターネット上の仮想空間 OZ が、単にSNSとしてではなく、社会インフラとしても使われているところが面白い。

今でこそ、SNSを介した送金サービスは数あるが、本作が公開された2009年には無かったから、サマーウォーズが未来を予言していたことになる。

送金だけならまだしも、最近はIoT化された、双方向にコネクテッドされた装置が増えている。

SNSをクラックされると、水道が止まる。サマーウォーズが予見した未来に一歩一歩近づいているのだろう。

 

AIに人格を感じることの諸問題

「劇場版デジモンアドベンチャー ぼくらのウォーゲーム!」を監督した細田守らしく、劇場版デジモンと共通した設定や演出が目立つ。

劇場版デジモンの敵として現れるディアボロモンに対応するのは、AI・ラブマシーン。

登場人物である侘助が作ったAIで、ラブマシーンと名付けられた理由は、作者の侘助自身が家族に愛され、認められたかったことにある。

結果的に、ラブマシーンは退治され、侘助は家族に受け入れられるが、彼の屈折した考えから作られたラブマシーンに救いはない。

物語上、侘助までラブマシーン討伐に協力するのは、過去の自分との決別、町山智浩がよく用いる「通過儀礼」としての側面があるから仕方ないけれど、不憫なのには変わりない。

しかしながら、単なるプログラムであるラブマシーンに人格を感じるのもおかしな話だと思う人もいるだろう。

そうした構図を考察している小説に、現代SFの巨匠中の巨匠、グレッグ・イーガンによる「ゼンデギ」がある。

2010年代の世界をベースに、今よりもAR技術が発達した未来を描き、この先現実でも巻き起こるであろう、IT技術への論争を考察している。

小説の前半は、現実の事件に範をとったイランの社会問題を描いているため、純粋にSF小説を読みたいと思っていた僕にとっては正直つまらない部分が多かったが、グレッグ・イーガン作品の中ではかなり読みやすいし、後半のIT技術への考察はとても興味深い。

 

 

山下達郎の曲がトゥー・マッチ

サマーウォーズといえば、エンディングで流れる山下達郎の曲が映画の雰囲気をよく表していてとても良い。

「海!山!川!」というハイテンションな夏ではなく、思い出の中の夏休みのような、ノスタルジーをもって思い出される夏が表れている。

夏休みの金曜ロードショーで流される映画として本作が認められるための、ダメ押しになるような名曲だった。

 

ジャンル : SF、ドラマ、ラブコメ

監督 : 細田守

キャラクターデザイン : 貞本義行

制作 : マッドハウス

主題歌 : 山下達郎 「僕らの夏の夢」

公式 : 映画 「サマーウォーズ」 公式サイト

 

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