日本のアニメ映画やOVAは、今ほどアニメが市民権を得ていなかった頃から現在に渡り、様々な影響を他作品に与えてきた。
それこそ海を越え、山を越えて。
その中には数十年前の作品も多いけれど、今でも通用するものも多い。
今回は、そんな劇場アニメとOVAのおすすめ42作品をまとめて紹介する!
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イノセンス
「GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊」の続編にあたる映画。
当初は攻殻機動隊2という、続編を意識させるタイトルだったが、鈴木敏夫の提案によりイノセンスと名付けられた。
innocenceとは、無罪や純真、無邪気、責任の不在を表す言葉で、子どもがこれを持つとされるが、映画のクライマックスでは騒動の黒幕が少女だとわかる。
無邪気から来る行動の結果が、他人にとっては邪気と受け取られることはままあるが、ここはそれを描いている。
この事実に憤慨するのがバトーで、彼は作中、どんどん生身の人間に興味をなくし、代わりに人形やペットの犬に興味を持っていく。
やばいおっさん。バトー
ラストシーンでは、バトーの部下、トグサの帰宅をお迎えする子どもという構図で、一般的な家族の幸せのシーンが描かれる。
その子どもが、ありえないほど醜く、子どもが抱える人形は逆に可愛らしい。
その場にいたバトーは、子どもが抱える人形を見つめる。
子どもが醜く見えていることが客観的な描写でなく、バトーの主観的な描写なら、「ちょっとやべーだろ、このおっさん」と呟いてしまうぐらいなのだけれど、パートナーの草薙素子が人間の殻を脱ぎ捨てたり(前作)といった出来事から、人間に対する興味が薄れていったのだろう。
それが、少し悲しいなと感じる。人間は人間にしか理解できないからだ。
もちろん、人間でさえ他人のことを100%理解することは不可能だけれど、これが犬や人形となると、格段に理解されなくなる。
この理解の非対称性というか、人間→非人間、非人間→人間への理解レベルの違いが悲しく虚しい。
また、人間は、犬や人形が何を考えているかを理解可能なものへ落とし込もうとする。(人形に対しては、架空の人格、自ら作り上げた100%理解可能な人格を与えて)
だけれどもそれは全くの勘違いで、本当は全く別のことを考えているのかもしれない。
理解可能なものを愛でて、理解できないものには恐れや敵意を抱く。
そうするとバトーが求めているものは、本質的には犬や人形じゃなく、理解可能性であり、その点に立てば、めちゃくちゃ気の合う友達とかでもOKなんじゃないだろうか?
そこに気づかないのは、体を機械化することが進んだ攻殻機動隊の世界や、プライベートでの人との関わりを避けなければいけない仕事の性質が関わっているのだろうから、時代や職業病に悩まされている男の話と単純化して理解している。
恐らく、もう少し時代が進んで、ほとんどの人間が身体を捨てればまた違うのだろう。
あの山田正紀も関わっている
あと、1974年に衝撃的に登場したSF小説「神狩り」で知られる山田正紀が、イノセンスの前日譚にあたる作品を作っていて、本当に超一流のスタッフばかり関わっていたんだなと嘆息するばかり。
ジャンル : サイバーパンク、アクション
監督 : 押井守
製作 : 石川光久、鈴木敏夫
キャスト : 大塚明夫、田中敦子、山寺宏一、大木民夫、仲野裕
音楽 : 川井憲次
超時空要塞マクロス 愛・おぼえていますか
「プロトカルチャ〜〜〜!」
ラストシーン、敵異星人の断末魔を一度聴いたら忘れられないアイドル+ロボットアニメ。
本作は「超時空要塞マクロス」というTVシリーズの26話までを再構成して劇場版にした作品。
この26話は、実質的な最終話とも言える回で、制作スタッフの気合の入り方もすごく、ちょっと火傷しちゃいそうなぐらいの熱量がある。
あらすじとしては、宇宙を舞台に、異星人同士の戦いに人類が巻き込まれるお話で、アイドル歌手 リン・ミンメイの歌によってその戦争に終止符が打たれる。
音楽をバックに戦闘シーンを流す、卑怯なほど良い演出
ラストシーンは、飯島真理「愛・おぼえていますか」をBGMに、ロボット戦闘とリン・ミンメイの歌唱姿を交互に流す、アニメ映画史に残る名シーン。
シューマンの曲が流れるウルトラセブンの最終回やエヴァンゲリオン劇場版もそうだけれど、一見戦闘シーンに似つかわしくない曲が流れる演出にはめっぽう弱い。
選曲が悪ければ、違和感しか残らない諸刃の剣だけれど、それだけにベストマッチしたときの演出効果は計り知れない。
TVシリーズには名シーンがいっぱい
劇場版は、TVシリーズの日常部分をカットしてスリム化し、よりテーマにフォーカスした作りとなっている。
そのため、TVシリーズの名シーンがカットされていることもままある。
もちろんそれらのシーンが無くとも十分な名作だけれど、この劇場版を観て、より深く登場人物たちの関係を掘り下げて知ってみたいと思った人には、是非TVシリーズを観てほしい。
いまだにフォローされる板野サーカス
本作には北久保弘之や庵野秀明という、その後の巨匠が関わっているけれど、際立って目立つのは板野一郎を置いて他にない。
板野一郎は、無数のミサイルと、それを避けるロボット、高速のカメラワークで構成されるアニメーション演出技法を作り出し、「板野サーカス」として、エウレカセブンなど後野アニメで度々使われるようになる。
また、マクロスをオマージュしたと公言している、ニール・ブロムカンプの実写SF映画「第9地区」では、厳密な板野サーカスではないながらも、同じ演出技法が使われている。
ニール・ブロムカンプは、ギャングスタのアンドロイドが異色でかっこ良すぎる「チャッピー」など、今最も注目されているSF映画監督。
その出世作たる第9地区は、「ブレア・ウィッチ・プロジェクト」や「クローバーフィールド」のようなドキュメンタリータッチのカメラワークで魅せる、これまでにないエイリアン像を描いた作品でとってもとってもおすすめ。
彼はエイリアン5の脚本を執筆しているそうで、過去のエイリアンシリーズとはひと味もふた味も違う作品が観られるはずで、今から期待しまくっている!
ジャンル : ロボット、SF、アイドル
監督 : 河森正治、石黒昇
キャスト : 飯島真理、長谷有洋、土井美加
作画監督 : 板野一郎、平野俊弘
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