日本のアニメ映画やOVAは、今ほどアニメが市民権を得ていなかった頃から現在に渡り、様々な影響を他作品に与えてきた。
それこそ海を越え、山を越えて。
その中には数十年前の作品も多いけれど、今でも通用するものも多い。
今回は、そんな劇場アニメとOVAのおすすめ42作品をまとめて紹介する!
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パーフェクトブルー
売れないアイドルがキレちゃったと思ってたら、実はあいつが……
今敏の数少ない作品の中で、ダントツにダークな印象を持つ、アイドルを主人公とした劇場アニメ。
アイドル業界、外から見るか? 中から見るか?
ネット上の偽物、アイドルを辞めた後のAVスレスレの仕事、ストーカー、売れていく元同僚などの出来事で、主人公・未麻(ミマ)は追い詰められていく。
売れないアイドルに振りかかる問題がまるっきり現在と同じで、いわゆる”偽アカ”に通じるものも出てくるから、これが1990年代の映画だとは到底思えない。
にわかオタクですらない僕は、アイドルの世界を何も知らないに等しいけれど、ニュースや人から聞いた話は、この映画と驚くほど似ている。
今まで僕が感じていたアイドルの世界がそのまま描かれているといっても大げさではない。
こう見ていることから分かるとおり、僕はアイドルの世界を不健康だと捉えている。
しかしその世界観は、アイドル界隈の外側からの見方で、実際はそう不健康でもないか、もっと不健康なんだろうなとも考えている。
というのも、テレビ東京の番組「YOUは何しに日本へ?」という番組で、イギリス人とドイツ人のAKBファンに密着する回があって、彼らがすごくキラキラしていたから。
よくある、「アイドルと付き合えるわけでもないのに、なんでファンやってんの?」だとか、「アイドルは外面だけ。あんなのただの偶像」のような、アイドル界隈へのネガティブな指摘や考えなんて、「どうでもいいわいな!」と言うがのごとく、好きなもののために突っ走っている。
高校が舞台の映画「桐島、部活やめるってよ」にもあったように、何かに夢中で、その成果なんて有っても無くても気にならないぐらい打ち込んでいる姿は本当に格好いい。
そういうものが、アイドルの世界にもあると感じた。
パーフェクトブルーは、あまりその点にはフォーカスせず、殊更に醜い面を描いているけれど、それはつまり、あくまで外部の視点で内側を描いた作品ということだし、少なくない真実を描いているはず。
虚像に振り回される怖さ
劇中、未麻は、アイドル時代のファンだった男に殺されそうになるが、これがどうも、ジョン・レノンを殺害したマーク・チャップマンと被る。
男は、未麻がアイドルの時に作り上げた嘘の姿を信じ、移ろいやすいリアルな人間としての未麻を認められない。
劇中では、アイドルとしての未麻に振り回された人間がもう二人出てくるけれど、人間の変りやすさを認められなかった者の悲劇は等しく振りかかる。
だけれど最終的に、形の上ではアイドル・ミマと決別できた主人公が本作の救いか。
ジャンル : サイコスリラー、アイドル
監督 : 今敏
脚本 : 村井さだゆき
原作 : 竹内義和『パーフェクト・ブルー 完全変態』
制作 : マッドハウス
カウボーイビバップ 天国の扉
近未来、宇宙を股にかける賞金稼ぎ「スペース・カウボーイ」によるSFアクションTVシリーズ「カウボーイビバップ」の劇場版。
TVシリーズでは、決してヒーローではない、強くもなく弱くもない主人公たちがオンボロ宇宙船に乗って星々を行き来し、賞金首を狙う。
その雰囲気は、どこか「私立探偵濱マイク」を思わせるものがあり、くたびれたオシャレさとでもいうものがある。
劇場版では、ヴィンセント・ギャロをモデルにしたキャラクター「ヴィンセント・ボラージュ」が企てるバイオテロを軸に物語が進む。
カウボーイビバップの魅力は音楽にあり
音楽を担当しているのは「花は咲く」の作曲をした菅野よう子。
カウボーイビバップでは、ジャズをメーンに、様々なジャンルの作曲をこなし、そのどれもが素晴らしい出来になっている。
特にTVシリーズオープニングソングの「Tank!」が実にいい。
当時としては、そして今も珍しい、ジャズ、ブルース、ロック、テクノが流れるアニメで、反対の声もあったというが、映像を観てみるとそれらの曲が無くてはならなかったと分かる。
ビューティフル・ドリーマーと似ている
天国の扉では、ヴィンセントが現実を夢と考えていたり、蝶が出てきたりと、明らかに胡蝶の夢を下敷きにしている。
戦争での体験をキッカケに記憶を失い、現実への手がかりを失ってしまったヴィンセントは、「本気で」現実を夢だと捉えている。
そんなヴィンセントはバイオテロによる大量殺戮を企てるけれど、その動機はいまいちハッキリしない。
動機がハッキリしないのも、無茶苦茶なことをしでかそうとするのも、それは、現実を夢だと考えているからだろうか。
だがそんなヴィンセントも、最期は過去の女性によって現実感を取り戻す。
これは「うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー」における胡蝶の夢へのアンサーと似ていて、「男にとって、女だけがリアルだ」とでも言わんばかり。
ただ、ビューティフル・ドリーマーは、諸星あたるが元から女好きだったからすんなり受け入れられたものの、ヴィンセントにそのイメージはなく、現実を再認識したシーンで、「え!お前女好きだったの!?」と驚いた。あ、ギャロがモデルだから無理ないのか!
ジャンル : ハードボイルド、アクション、SF、コメディ
監督 : 渡辺信一郎
原作 : 矢立肇
音楽 : 菅野よう子
制作 : ボンズ
シリーズ公式サイト : カウボーイビバップ
ラーゼフォン 多元変奏曲
年上好きの男の子にはたまらない、時間差ラブストーリーロボットアニメ。
主人公ロボットの必殺技が歌であること、音楽をモチーフにした設定や演出が頻出する点や、ムー帝国、脚本など、勇者ライディーンへの直接的なオマージュが散見されるが、関わりはない。
TVシリーズ「ラーゼフォン」の劇場版だが、ストーリーは再構成されているため続編ではなく、TVシリーズよりも、主人公・神名綾人とヒロイン・美嶋遥の恋愛にフォーカスしている。
この二人は元々恋人だったのだけれど、ある事件がきっかけで離れ離れになった後、神名綾人は高校生、三嶋遥は20代後半の軍人(?)で再開する。
この歳の差が実にイイ!しかも、三嶋遥が高校生の神名綾人にときめいているシーンなんか、実にキュートじゃない。
ブルーフレンドはアニメ史に残る
もう一つラブストーリーとしてよく出来ているところがあって、TVシリーズ19話「ブルーフレンド」にあたる、朝比奈浩子と神名綾人による逃避行がそれだ。
逃避行から始まり、二人だけの共同生活、そして切なすぎる終わりへと続く。
逃避行というとおり、二人は世間から身を隠しつつ、ビジネスホテルで生活していて、生活費は神名綾人がバイトで稼いでいる。
ロボットアニメでここまで生活臭の溢れたお話は見たことがない。
ネタバレしたくないほどいい話だから、最後は書かないけれど、逃避行も終わりを迎える。
ロミオとジュリエットを越える、不可抗力的なすれ違いがその終わりで描かれるが、僕は初めてこのシーンを観た時、鳥肌がおさまらなかった。
ジャンル : ロボット、SF、ラブストーリー
監督 : 出渕裕、京田知己
主題歌 : 坂本真綾「turn the rainbow」
公式 : Rahxephon________official web site
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